その便利さから、御愛用者が増え続けている「調光レンズ」。
「なぜ、色が付くの?」
カラーレンズに変わったり、透明に戻ったり、と
この摩訶不思議な現象について少しお話ししたいと思います。
目に見えない紫外線、そして赤外線。
その間にある波長域を、我々の眼は「光」として感じ、見ています。
可視光線が持つ色は「虹」という自然現象で誰もが見ていると思います。
ちなみにの話、
≪紫外線の定義(可視光線との境目)≫ は業界によっては異なっています。
“その波長までがカット出来ていなければ「UVカット」と表示できません”というルールの元になっています。
話を戻します。
波長の長さ(短さ)によって、このような順番で呼ばれています
ガンマ線 → X線 → 紫外線(C→B→A)→ 可視光線 → 赤外線(近→中→遠)→ 電波
紫外線も可視光線も、様々に利用されている電磁波の一部なのです。
眼鏡のレンズは上図のような構造で出来ています。
現在の主流はプラスチックレンズ。
素材はメガネレンズにのみ利用されるプラスチックなのですが、その素材でつくられた『レンズ基材』の表面に幾層ものコーティングが施されています。
では、
“調光の元” となるものは何処に施されるのか?
そのお話しの前に、関連することを一つ。
サングラス等に使用されるカラーレンズが、どのように作られているのか。
カラーレンズの製造方法を簡単に御紹介します。
少しわかりずらい画像で恐縮なのですが、染料の入った容器にレンズを浸け置き染色しています。
色毎にレシピがあり、それに従って染色されます。
気温や湿度で仕上りの色調が変わってしまう染色工程において、厳しい管理の下で作業されています。
染料の温度は高温であり、浸け込むほどに色は高濃度になります。
レンズ素材の分子構造が仮に図のようになっていたとします。
染色溶液の温度が高いと、レンズ素材の分子構造の隙間がさらに広がり染色剤が浸透しやすくなります。
染料の分子がレンズ素材の分子構造内に入り込むことで染色されます。
このようにカラーレンズは作られているのですね。
では、
“調光の元” となるものは何処に施されるのでしょうか。
カラーレンズと同様にレンズ素材に浸透させる?
実は、
調光の元となる染色剤の分子は大きくてレンズ素材の分子間に浸透しません。
ゆえに、先に御紹介したレンズ表面の最下層に「薄膜」を施して、その薄膜に浸透させるのです。
*ちなみに*
最も薄型の高屈折レンズ1.74の屈折率を持つレンズ素材は、逆に分子構造が非常に狭く染色剤の分子が浸透しません。
その為、染色濃度に制約があったり染色できる色味が限られていたりするのです。
「薄膜」に染色する方法を採用している場合もあります。
上図のようなイメージです。
そうして出来た「調光膜」内に存在する『フォトクロミック化合物』に特定の電磁波が当たることで、化学結合の組み換えが起こり着色します。
一般的な調光素材は、バラバラに存在していたフォトクロミック化合物が紫外線の波長で化学結合の組み換えを起こし、整列・着色します。
紫外線が遮断されると元通りに組み換えられ退色します。
可視光線にも反応し着色する「可視光調光」では、430nm(ナノメートル)* 付近までの波長で組み換えが起こるような素材でつくられています。
*最初の画像(光のスペクトル)をご参照ください。
とても簡単な内容でしたが、着色と退色を繰り返す調光レンズのしくみを知っていただけましたでしょうか?
最後に取り扱い上の注意事項を御案内します。
レンズ表面に施された『調光膜』は、とてもデリケートです。
イメージとしてはフカフカの柔らかい膜なので、非常にキズつきやすい性質を持っています。
爪や硬いモノによる圧迫で簡単にキズがついてしまうのです。
日々の使用における摩擦等でも劣化しやすく、キズや劣化により調光機能も失われる恐れがあります。
現在、調光レンズをご愛用中のユーザー様は、レンズ表面を傷めないように是非とも丁寧な取扱いをお勧めいたします。
ニシダ